1. 年1回のストーブチェック

雄別炭砿もその例にもれず、広大な敷地に生産設備だけでなく、社員のための住宅や1万2千名の社員と家族のための施設がありました。特に炭砿住宅といわれる社宅は密集して建てられているため、火災に対する注意は凄まじいものがありました。

年1回、詰所員による社宅内の火災予防チェックがあります。その日は玄関前にストーブからブリキ製の煙突を外して、詰所員によるチェックを受けます。そして家の中でストーブのチェックと火災予防に不備がないかの確認も受けます。

1年間使われたブリキ製の煙突は本来全部交換し新品を使ったほうが良いのですが、奥さん方は出費を抑えたくてそのまま使いたがります。しかし1年間使われたものはブリキが薄くなり、すすで形がもっている状態が少なくありません。

ブリキにピンホールの穴が開いていたり、ブリキが痛んでいると遠慮なく足でつぶされます。そうなると商事(購買)の売店に買いに行かざるを得なくなります。売店にはそのことを予想して、その日は大量に煙突が置かれています。

ストーブも少しでも破れがあったりするものは家の外に捨てられます。ストーブの上に針金を張り洗濯物をほせるようにしてあるのが見つかると大変です。乾燥した衣服がストーブの上に落ちて火事になる可能性が高いことから、禁止されているので詰所員がペンチでパチっと切ってしまうだけでなく、詰所に釈明に行くようにと言い渡されます。おそらく、その日のその家の家族会議は紛糾することでしょう。夫が行くか、妻が行くかと。